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エデンの果ての家*桂望実

  • 2017/09/04(月) 10:04:55

エデンの果ての家
エデンの果ての家
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桂 望実
文藝春秋
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母が殺された――その悲しみの葬儀の席で逮捕連行されたのは、弟だった。

大企業勤務のエリートサラリーマンの父、良妻賢母を絵にかいたような料理上手の母、幼いころから両親の期待を一身に背負い、溺愛されてきた弟、そして彼らのなかで、ひとり除けものであるかのように成長した主人公、葉山和弘。
遺棄死体となって発見された母親の被疑者が弟であったことで、父親は半狂乱になって弟の無実を証明しようとするのだが――。


ミステリでもあるが、名ばかりの家族がほんとうの家族になっていく苦しい道のりの物語でもあるような気がする。親は子どものことを、実は何もわかってはいないし、子もまた親の心底の気持ちを理解しているとは言えず、互いにすれ違い、思い違ったまま、別々の記憶を背負って苦しんでいるのである。葉山家の場合、それを解きほぐすきっかけになったのが、母の死だったのである。その後、犯人として弟が逮捕されてからの証人探しのなかで少しずつ明らかになっていく真実を直視することで、これまでの家族に対する思い込みが崩壊し、初めから組み立て直さなければならなくなる。被害者家族であり、加害者家族でもあるという複雑な立場に置かれた葉山家の葛藤と、だからこそ家族の形が取り戻せるかもしれないという微かな喜びがまじりあった一冊でもある。

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