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あなたの隣にいる孤独*樋口有介

  • 2017/10/17(火) 19:00:34

あなたの隣にいる孤独
樋口 有介
文藝春秋
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14歳の玲菜(れな)には戸籍がない。母親は〈あの人〉から逃げるために出生届を出さなかった。母と二人、町から町へひっそりと移り住み、ここ川越にも二年。一人で勉強している玲菜のために教科書を探してくれるリサイクルショップの主人、秋吉とその孫の牧生とも顔見知りになったある日、突然「あの人に見つかった」という電話を最後に、母は消息を絶つ。学校とも、社会ともつながりのない少女を一人残して…。


戸籍がなく、学校にも通えず、追手を逃れるために数年で引っ越すことを繰り返して14歳まで育った玲菜が主人公である。リサイクルショップで買った一年遅れの高校の教科書で自習し、いつか戸籍を手に入れて本物の高校生になることを夢見ながら、フェイクの制服を身に着けてJKカフェでアルバイトをしている。そんなある日、母からの切羽詰まった電話で、「あの人」に見つかったから帰ってくるなと言われ、行き場をなくした玲菜は、教科書や必要なものを買っているリサイクルショップに世話になることになる。この店の店主の秋吉も、たまたま手伝っていた義理の息子の周東も、ひと癖もふた癖もありそうな人たちなのだが、何かと助けになってくれ、玲菜の事情を探り当てることになる。前半は、母娘と追手のスリリングな物語かと思いきや、話は思わぬ方向に展開し、どうなるのかと思っていたのだが、母から連絡があったあたりから、なんとなく雰囲気がだれてきたような感じもある。面白くないわけではないのだが、いろんな要素を突き詰めきれていないような印象なのは、ちょっぴり残念である。考えさせられる点は多々あった一冊である。

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