fc2ブログ

賛美せよ、と成功は言った*石持浅海

  • 2017/11/26(日) 07:13:23

賛美せよ、と成功は言った (ノン・ノベル)
石持浅海
祥伝社
売り上げランキング: 115,600

武田小春は、十五年ぶりに再会したかつての親友・碓氷優佳とともに、予備校時代の仲良しグループが催した祝賀会に参加した。
仲間の一人・湯村勝治が、ロボット開発事業で名誉ある賞を受賞したことを祝うためだった。
出席者は恩師の真鍋宏典を筆頭に、主賓の湯村、湯村の妻の桜子を始め教え子が九名、総勢十名で宴は和やかに進行する。
そんな中、出席者の一人・神山裕樹が突如ワインボトルで真鍋を殴り殺してしまう。
旧友の蛮行に皆が動揺する中、優佳は神山の行動に〝ある人物〟の意志を感じ取る。
小春が見守る中、優佳とその人物との息詰まる心理戦が始まった……。
白熱の対局を観戦しているような読み応え! 倒叙ミステリの新たな傑作、誕生。


碓氷優佳物語の最新作である。相変わらず冷製で、理詰めで周囲を固め、攻め上っていく印象である。予備校時代の仲間たちのなかで、最初に成功を手にした湯村を祝う会の席上で、隣の席にいて、いちばん慕っていたはずの恩師の真鍋をワインボトルで殴って死なせた神山を巡り、いち早くそのからくりに気づいた優佳が、きっかけを作った人物をさりげなく追い詰める姿とほかのメンバーの反応を、本作の語り手役の武田小春の目を通して描いていく。他者にはただの雑談と映る場面でも、事情を察している小春に語らせることで、二人の応酬のギリギリ感が伝わってきてハラハラドキドキを愉しめる。犯人(と言っていいのかは疑問だが)の真意には途中でうっすら気づいたが、それでも興味は削がれることなく、二人の伯仲したやり取りと、他のメンバーの裡に抱えた心情が暴露され始める緊張感で、ページを繰る手を止められなくなる。優佳のことをもっともっと知りたいと思わされる一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する