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さくら、うるわし 左近の桜*長野まゆみ

  • 2017/11/30(木) 19:50:33

さくら、うるわし 左近の桜
長野 まゆみ
KADOKAWA (2017-11-02)
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甘美で幻想的な異界への誘い――匂いたつかぐわしさにほろ酔う連作奇譚集。

男同士が忍び逢う宿屋「左近」の長男、桜蔵(さくら)は高校を卒業し、大学に進学。それを機に実家をはなれ、父の柾とその正妻と同居することになる。しかし、やっかいなものを拾う”体質”は、そのままで……
大雨の朝、自転車通学の途中で事故にあい、迷いこんだ先は古着を仕立て直すという〈江間衣服縫製所〉。その主の婆さんは着ていた服で浮き世の罪の重さをはかり、つぎに渡る川や行き先を決めるという――この世ならざる古着屋や巡査との出逢い、境界をまたいで往き来する桜蔵の命運やいかに――!?(この川、渡るべからず)
匂いたつかぐわしさにほろ酔う、大人のための連作奇譚集。


左近の桜シリーズ第三弾。
今回も桜蔵(さくら)は、妖しいものを引き寄せている――というか、引き寄せられていると言った方がいいのかもしれない。この世とあの世の境をあっさり越えて、見えないはずのものに翻弄されているような桜蔵を見ていると、読み手のこちらが消耗してくる気がする。やはりこういうのはあまり得意ではない。自分の輪郭が曖昧になっていくような錯覚に陥るので、あちらの世界に取り込まれそうになる。桜蔵は慣れていてどうということもないのだろうか。そんなこともないだろう。ともかく、現実世界のひずみに迷い込んだような一冊である。

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