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さらさら流る*柚木麻子

  • 2017/12/09(土) 16:11:36

さらさら流る
さらさら流る
posted with amazlet at 17.12.09
柚木 麻子
双葉社
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あの人の中には、淀んだ流れがあった――。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許した裸の写真が、
ネットにアップされていることを偶然発見する。恋人の名は光晴といった。
光晴はおどけたりして仲間内では明るく振る舞うものの、どこかそれに無理を感じさせる、ミステリアスな危うさを持っていた。しかし、なぜ6年も経って、この写真が出回るのか。
菫は友人の協力も借りて調べながら、光晴との付き合いを思い起こす。
飲み会の帰りに渋谷から暗渠をたどって帰った夜が初めて意識した時だったな……。
菫の懊悩と不安を追いかけながら、魂の再生を問う感動長編。


読み始めてしばらくは、なんだかとらえどころのない物語だという印象だった。だが、暗渠をたどって家まで歩く道筋で、菫と光晴の不安定な安定とでもいうようなものが、すでにちらちらと顔をのぞかせていて、その後の展開に興味が湧いた。客観的にみれば言いたいことはいくらでもあるような二人の関係なのだが、菫の心の動きも光晴の屈託も、すんなりと胸に落ち、どうにもならない心の動きの、まったくどうにもならなさにやり切れなくもなりながら、ある意味共感を覚えたりもする。リベンジポルノ――と言っていいのかどうかはよく判らないが――が題材の一部になってはいるが、決してそれだけではなく、包まれるように守られてきた菫が、自分の脚で立つ物語とも言える。さまざまなことが象徴されているような一冊だと思う。

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