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カーテンコール!*加納朋子

  • 2018/03/16(金) 10:56:10

カーテンコール!
カーテンコール!
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加納 朋子
新潮社
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幕が下りた。もう詰んだ。と思ったその先に、本当の人生が待っていた。経営難で閉校する萌木女学園。私達はその最後の卒業生、のはずだった――。とにかく全員卒業させようと、限界まで下げられたハードルさえクリアできなかった「ワケあり」の私達。温情で半年の猶予を与えられ、敷地の片隅で補習を受けることに。ただし、外出、ネット、面会、全部禁止! これじゃあ、軟禁生活じゃない!


「砂糖壺は空っぽ」 「萌木の山の眠り姫」 「永遠のピエタ」 「鏡のジェミニ」 「プリマドンナの休日」 「ワンダフル・フラワーズ」

乙女ばかりの寮生活の半年を描いた物語である。と聞くと、さぞや華やかできらびやかな日々が繰り広げられるのだろうと想像したくなるが、舞台は、経営難による平衡が決まった萌木女学園の敷地の一角に建つ合宿棟のような建物。スタッフは、理事長の角田を始め、彼の妻や娘、老教師や校医など、ほぼ身内と言ってもいいような面々。さらには、外部との接触は一切禁止、食事も間食はじめ、生活の一部始終をしっかり管理された、矯正施設のようなものだったのである。生徒たちはと言えば、幾度もの救済措置からも零れ落ちた、折り紙付きの落ちこぼれであり、それぞれが問題を抱えている。覇気のない補講合宿なのだが、理事長の采配によって同室にされた者たちは、少しずつ相手のことを見るようになり、翻って自らにも目を向けるようになっていく。亀の歩みのようなのんびりしたものであっても、確実に進んでいる姿を見ていると、出会いの妙を感じさせられる。誰もが何かしらの屈託を抱えて生きているという、当たり前のようなことを認識するだけで、世界の色が変わって見えてくることもあるのだろう。最後の章では、角田理事長の胸の裡が語られるが、それに耳を傾け、その哀しみを想像できるようになった彼女たちの姿にも感動を覚える。切なくやるせなく、だが、じんわりと胸を温めてくれる一冊だった。

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