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風は西から*村山由佳

  • 2018/05/18(金) 16:30:05

風は西から
風は西から
posted with amazlet at 18.05.18
村山 由佳
幻冬舎 (2018-03-27)
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大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、繁盛店の店長となり、張り切って働いていた健介が、突然自ら命を絶ってしまった。大手食品メーカー「銀のさじ」に務める恋人の千秋は、自分を責めた――なぜ、彼の辛さを分かってあげられなかったのか。なぜ、彼からの「最後」の電話に心ない言葉を言ってしまったのか。悲しみにくれながらも、健介の自殺は「労災」ではないのか、その真相を突き止めることが健介のために、自分ができることではないか、と千秋は気づく。そして、やはり、息子の死の真相を知りたいと願う健介の両親と共に、大企業を相手に戦うことを誓う。小さな人間が秘めている「強さ」を描く、社会派エンターテインメント。


過労死、ことに過労自殺に焦点を当てた物語である。現実に起こった出来事を下敷きにしているせいもあり、遺族の憤りや口惜しさがリアルに伝わってくる。過労自殺に至る以前の、健介と千秋の二人の関係が、あまりにもあたたかく、幸福に包まれて充実しているので、過重労働によるすれ違いや、気持ちのささくれ、実際に顔を合わせて話ができないことからくる誤解などがつぶさに見て取れて、胸が痛くなる。ずぶずぶとアリジゴクに囚われていくさまを、客観的に眺められるので、何度も押しとどめたい思いに駆られる。取り返しがつかなくなる前に何とかならなかったのか。誰しもがそう思うだろうが、本作を読む限り、それがものすごく難しいことも思い知らされ、愕然とさせられる。最終的には和解という決着に辿り着いたわけだが、それでも健介は戻ってこないのだということが、いっそうやりきれない思いにさせる。一気に読み進んだ一冊である。

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