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かがみの孤城*辻村深月

  • 2018/06/04(月) 07:08:54

かがみの孤城
かがみの孤城
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辻村 深月
ポプラ社
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あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。


学校でいじめられている中学生を励ます物語かと思って読み始めたが、想像よりもはるかに深く温かく胸の奥までしみ込んでくる。お城のナビゲーター役のオオカミさまとは誰なのか、なぜこの七人が選ばれたのか、願いの部屋の鍵を見つけるのは誰で、どんな願い事をし、その後はどうなるのか。などなど、さまざまな興味がを掻き立てられながら読み進むことになる。いじめの陰湿さや、傷ついて、殺されるとまで思い詰める被害者の心の動きと、学校側の認識との激しすぎるずれにいらだったり、母の心配や焦りや不安のリアルさと、それにさえ反発してしまう娘の苦しさ。それぞれに苦しみを抱えて城にやってくる仲間たちとのやりとりも、初めは手探りで、全面的には心を許すことができない。それほどに傷ついていることのやりきれなさにも胸が痛む。そして、少しずつ、ひとつずつ、さまざまな事情が明らかになっていくにつれ、さらに涙を誘われる場面が多くなり、最終的にすべてがつながったときには、さらなる驚きと納得、そして安心感に包まれるのである。城に呼ばれる子どもなどいないほうがいいが、彼らはここに呼ばれて、まさに人生を生き抜く力を得たのだと思う。子どもだけでなく、すべての人が勇気づけられる一冊である。

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