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私はあなたの記憶の中に*角田光代

  • 2018/06/24(日) 16:18:15

私はあなたの記憶のなかに
角田 光代
小学館
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角田ワールド全開!心震える待望の小説集
《「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。夜行列車の窓の向こうに、墓地の桜の木の彼方に、夏の海のきらめく波間に、レストランの格子窓の向こうに。おはよう、そしてさようなら。」――姿を消した妻をさがして僕は記憶をさかのぼる旅に出た。》(表題作)のほか、《初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。》(「父とガムと彼女」)、《K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。》(「猫男」)、《イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。》(「水曜日の恋人」)、《大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。》(「地上発、宇宙経由」)など八つの名短篇を初集成。
少女、大学生、青年、夫婦の目を通して、愛と記憶、過去と現在が交錯する多彩で技巧をこらした物語が始まる。角田光代の魅力があふれる魅惑の短篇小説集。


身近にありそうで、でも実際にはなさそうで、それでいて何とはなしに身に覚えのある感情を揺さぶられるような印象の物語たちである。実際に体験したわけではないのに、その場にいたことがあるような親しさを感じることがある。それは、人物にだったり、場所にだったり、あるいはその情景にだったりするのだが、振り返ってみても自分の人生の中にそんな場面はなかったはずなのである。そんな風にいつの間にか惹き込まれている一冊だった。

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