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青空と逃げる*辻村深月

  • 2018/07/12(木) 10:49:29

青空と逃げる (単行本)
辻村 深月
中央公論新社
売り上げランキング: 13,725

深夜の交通事故から幕を開けた、家族の危機。押し寄せる悪意と興味本位の追及に日常を奪われた母と息子は、東京から逃げることを決めた――。

辻村深月が贈る、一家の再生の物語。読売新聞好評連載、待望の単行本化。


新聞小説だったとは知らずに読んだのだが、連載中に呼んでいたとしたら、次の展開を知りたくて、さぞやもどかしい思いをしたことだろう。舞台俳優の父・本条拳は、共演女優の運転する車に同乗していた時に事故を起こし、女優はその後自殺。彼自身も故あって家族のもとから姿を消すことになる。拳の息子・力の目線で、その後の母・早苗と二人の逃亡生活が語られる。小学四年の力に、母な詳しい事情は語らず、それでも逃げているのだろうことは察せられるので、力自身ももどかしく寄る辺ない心地で着いていくしかないのである。行った先々で出会う人々との関わり、母の苦労と自らの非力さ、人々の温かい心遣いと先行きの見えない毎日は、どれほど不安だったろうかと思うと胸が痛む。追手は、どこへ逃げてもやってきて、人間関係が築けそうだと思うと、そこを離れなければならなくなるのは、やり切れなさすぎる。それでも、力も早苗も、少しずつ強くなり、経験値を上げていく姿を、応援したくなる。さまざまな要素で想像を掻き立てられるが、ラストは青空の色があたたかく思える。涙が止まらない一冊だった。

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