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モーダルな事象 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活*奥泉光

  • 2018/08/21(火) 16:56:12


大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く…。ミステリをこよなく愛する芥川賞作家渾身の大作。


600ページ近いボリュームである。しかもみっしりと活字が詰まっている。さらには、導入部は、愚にもつかない桑潟幸一准教授の暮らしぶりが延々と続き、思わず本を閉じそうになること多々。だが、次第に、何が何だか判らない、いつ、どんなわけで巻き込まれたのかも判然としない、不可思議な事件の渦中に呑み込まれ、これを解き明かすのかと思えばさにあらず、クワコー自身はただならぬものを感じながらも、相変わらず愚にもつかない生活を送っていて、北川アキと諸橋倫敦という元夫婦がコンビとなって、なぜか調査に乗り出すのである。いまが一体いつなのか、どれが本当にあったことで、どれが妄想なのか、何もかもが混沌としていて、めまいがしそうなのであるが、後半は、なぜか次の展開を早く知りたくなるから不思議なものである。軽く読める物語とは言えないし、クワコーに肩入れしたくもならないのだが、なぜか惹きつけられる一冊でもあった。

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