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望月のあと 覚書源氏物語『若菜』*森谷明子

  • 2018/09/05(水) 13:48:15

望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)
森谷 明子
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紫式部が物語に忍ばせた、栄華を極める道長への企みとは?平安の都は、盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。しかし、そんな世情を歯牙にもかけぬかのように「この世をばわが世とぞ思う…」と歌に詠んだ道長。紫式部は、道長と、道長が別邸にひそかに隠す謎の姫君になぞらえて『源氏物語』を書き綴るが、そこには時の大権力者に対する、紫式部の意外な知略が潜んでいた。


役職や人名の読み方を呑み込むのがなかなか大変で、初めのうちは現代もののようにスムーズには読み進められないのだが、次第にそれも気にならなくなり、物語の展開に惹き込まれていく。源氏物語が、刻々と出来上がり、周りに少なくない影響を及ぼすさまを見ていると、物語というものの力を強く感じる。影のフィクサーは実は紫式部、だったりして……、なんて。そして、いつの時代も、女たちの逞しさは変わらない。殿方の陰で、つつましやかにしているように見えて、その実、ほんとうに肝が据わっているのは女たちなのである。なかなかに痛快。副題には若菜とあるが、玉葛の印象が強い一冊でもあった。

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