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殺人鬼にまつわる備忘録*小林泰三

  • 2018/12/04(火) 07:46:44

殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
小林 泰三
幻冬舎 (2018-10-10)
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見覚えのない部屋で目覚めた田村二吉。目の前に置かれたノートには、「記憶が数十分しかもたない」「今、自分は殺人鬼と戦っている」と記されていた。近所の老人や元恋人を名乗る女性が現れるも、信じられるのはノートだけ。過去の自分からの助言を手掛かりに、記憶がもたない男は殺人鬼を捕まえられるのか。衝撃のラストに二度騙されるミステリー。


短期記憶が定着しない田村二吉が主人公なので、チャプターが変わるたびに記憶がまっさらになり、改めて現在の状況を、自らが記したノートで確認するところから始まる。読者はもちろん経緯をすべてわかっているのに、主人公だけが、新たな気持ちで事に当たるのが、新鮮でもありもどかしくもある。経験則が役に立たないというのは、どういうものだろうか、と想像するだけで絶望的になるが、二吉はそんなことすら考える余裕なく、日々を生きている。しかも、触れた人物の記憶を自由に書き換えられる殺人鬼と対峙しているのだから、本人以外の周囲の危機感はさらに増す。ラストは、一見うまくいったように見えるが、いささかもやもやとする気分が残る。本当は何が真実なのだろうか。気になって仕方がない一冊ではある。

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