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雨上がり月霞む夜*西條奈加

  • 2019/01/08(火) 08:54:44

雨上がり月霞む夜 (単行本)
西 條奈加
中央公論新社
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大坂・堂島で紙油問屋を営んでいた上田秋成は、一帯を襲った火事ですべてを失い、幼なじみの雨月が結ぶ庵のもとに寄寓して、衣食を共にするようになった。ところがこの雨月、人間の言葉で憎まれ口を叩く「遊戯」と呼ばれる兎を筆頭に、「妖し」を惹きつける不思議な力を持っており、二人と一匹の前に、つぎつぎと不可解な事象が振りかかるが――。
江戸時代中期の読本『雨月物語』に材を取った、不穏で幻想的な連作短編集。


言ってみれば『雨月物語』誕生秘話なのだが、それだけではない奥深さがある物語である。人の心というものの不可思議さ、異世界の者とこの世の者との関わり方、見えざる者とのふれあい、などなど、現実離れした事々も多いのだが、それらを大きく包み込んで受け容れられてしまうのである。秋成の屈託と雨月の憂いがそれぞれに切なくて、ぐんぐん惹きこまれていくのだが、最後にこんな風にひとつになるとは……。切ないながらも喜ぶべきことなのだろうと自分を納得させる一冊でもある。

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