fc2ブログ

黒猫のいない夜のディストピア*森晶麿

  • 2019/01/29(火) 16:57:54

黒猫のいない夜のディストピア
森晶麿
早川書房
売り上げランキング: 30,904

大学院修了後に博士研究員となった私は、所無駅付近で自分そっくりの女性と遭遇する。 白い髪、白い瞳、白いワンピースの彼女はあきらかにこちらを見つめていた。 学部長の唐草教授の紹介で出会った反美学研究者、灰島浩平にその話をすると、様々な推理を展開する。 本来なら黒猫に相談したいところだったが、黒猫の言葉――とにかく、まだ結婚は無理――がひっかかり、連絡できずにいた。 白を基調にした都市開発計画が持ち上がる所無。 自宅に届いた暗号が書かれた葉書。 私そっくりの女性となぜか会っていた母の雪絵。 いったい私の周りで何が起きているの――? アガサ・クリスティー賞受賞作から連なる人気シリーズ、待望の再始動。


シリーズものとは知らずに読んだが、たぶん何の問題もなかった。キャラクタやいきさつを把握していれば、より深く読めたのかもしれないが……。ポオと竹取物語を関連付けたり、モダニズムとゴシックやグロテスクを論じたりと、学術的な部分はわかったようなつもりになっただけで読み進めたが、完璧に理解できなくてもおそらく問題はなかっただろう。舞台となった所無のモデル都市に、かつてなじみがあったこともあり、道筋や街並みを思い浮かべられるので、より愉しめた。都市開発という公共的な題材を扱っているようであって、実はごくごく個人的な人間と人間との結びつきが語られている。私と黒猫の信頼がより深まったようでなによりである。シリーズのほかの作品も読んでみたくなる一冊だった。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する