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ガラスの殺意*秋吉理香子

  • 2019/04/03(水) 16:43:12

ガラスの殺意
ガラスの殺意
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秋吉 理香子
双葉社
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「憎きあいつを殺したのは……私!?」二十年前に起きた通り魔事件の犯人が刺殺された。
警察に「殺した」と通報したのは、同じ事件で愛する両親を失った女性。
だが、彼女はその現場から逃げる途中で交通事故に遭い、脳に障害を負っていた。
警察の調べに対し、女性による殺害の記憶は定かでない。
復讐は成し遂げられたのか、最後に待つ衝撃の真相とは?
驚愕の長編サスペンス・ミステリー!


事故による高次脳機能障害のせいで、記憶が保持できなくなった柏原麻由子は20年前に両親を殺した通り魔の男を刺殺したと自ら警察に通報し逮捕される。だが、記憶がとどまらないために、捜査は難航し、麻由子自身も自分がどうして、なんのためにその場所にいるのかが頻繁にわからなくなる。通り魔から逃げる途中の麻由子を車ではね、現在の状況の原因を作った光治は、麻由子の夫となり、献身的に介護をしている。母親のように親しくし、麻由子を支えてくれる久恵という存在もある。取り調べを担当する刑事、桐谷優香と野村淳二のとの捜査などあれこれとの二本立てで物語は進む。記憶障害ゆえのもどかしさに加え、なにか割り切れない事件の在りようが、もやもや感を増すのだが、あるところから、これはもしや、と思わされる。それからは間違った方へ進まないようにと祈るような気持ちで読み進んだ。解決に導く場面は、いささか偶然に頼りすぎな感もなくはないが、物語の興味を損なうほどのものではないだろう。ラストの切ない幸福感は堪らない。もろくはかなく愛にあふれた一冊だった。

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