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魔女は甦る*中山七里

  • 2019/05/20(月) 16:41:55

魔女は甦る
魔女は甦る
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中山 七里
幻冬舎
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埼玉県の長閑な田園地帯で、肉片と骨の屑のようなバラバラ死体が発見された。被害者は現場近くにある製薬会社・スタンバーグ製薬に勤めていた桐生隆。仕事ぶりも勤勉で質素な暮らしを送っていた青年は、なぜ殺されなければならなかったのか?埼玉県警捜査一課・槙畑啓介は捜査を続ける過程で、桐生が開発研究に携わっていた“ヒート”と呼ばれる薬物の存在を知る。それは数ヶ月前、少年達が次々に凶悪事件を起こす原因となった麻薬だった。事件の真相に迫るほど、押し隠してきた槙畑の心の傷がえぐり出されていく。過去の忌まわしい記憶を克服し、槙畑は桐生を葬った犯人に辿り着けるのか。


『ヒートアップ』を先に読んでしまったが、それでも充分に恐ろしさに戦慄させられた。国は、都合の悪いことはすべて隠そうとするが、現実にも知らされていないだけで、本当は恐ろしいことがすぐそこに迫っているように思えてきて、心底震える。極近い関係者しか知らない恐怖が、ほかにも多数ありそうで疑心暗鬼に駆られる。本作の事案の場合は、良心とかつての悔恨を原動力に、戦ってくれる警察官の存在で、爆発的に恐怖が広がる危険はいったんは回避されたが続く物語のことを思えば、決して穏やかではいられない。現実社会では、科学者の良心を切に願うのみである。息ができなくなる心地の一冊だった。

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