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マジカルグランマ*柚木麻子

  • 2019/06/19(水) 16:37:02

マジカルグランマ
マジカルグランマ
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柚木 麻子
朝日新聞出版
売り上げランキング: 1,959

いつも優しくて、穏やかな「理想のおばあちゃん」(マジカルグランマ)
は、もう、うんざり。夫の死をきっかけに、心も体も身軽になっていく、75歳・正子の波乱万丈。

若い頃に女優になったが結婚してすぐに引退し、主婦となった正子。
映画監督である夫とは同じ敷地内の別々の場所で暮らし、もう五年ほど口を利いていない。
ところが、75歳を目前に先輩女優の勧めでシニア俳優として再デビューを果たすことに!
大手携帯電話会社のCM出演も決まり、「日本のおばあちゃんの顔」となるのだった。
しかし、夫の突然の死によって仮面夫婦であることが世間にバレ、一気に国民は正子に背を向ける。
さらに夫には二千万の借金があり、家を売ろうにも解体には一千万の費用がかかと判明する。

亡き夫に憧れ、家に転がり込んできた映画監督志望の杏奈、
パートをしながら二歳の真実ちゃんを育てる明美さん、
亡くなった妻を想いながらゴミ屋敷に暮らす近所の野口さん、
彼氏と住んでいることが分かった一人息子の孝宏。
様々な事情を抱えた仲間と共に、メルカリで家の不用品を売り、
自宅をお化け屋敷のテーマパークにすることを考えつくが――

「理想のおばあちゃん」から脱皮した、
したたかに生きる正子の姿を痛快に描き切る極上エンターテインメント! 「週刊朝日」連載の書籍化


本作の主人公はおばあちゃんの柏葉正子だが、さまざまな立場のステレオタイプにはまらずに生きていこうとするすべての年代のすべての人々が主役になり得る物語なのだろうと思う。何の疑がいも抱かずに、「おばあちゃんはこうあるべき」という世間の目に応えるような自分であろうとしてきた正子だったが、ある事件をきっかけに、本来の自分に目覚めてみれば、これがなかなか具合がよく、なんだかいろんなことが身の回りに起こるようにもなってきた。憤慨したり、悩んだり、自己嫌悪したり、またやる気を出したりしながら、愉しんだり落ち込んだりして生きていくのも悪くないかもしれない、と改めて自分の立ち位置を見回してみたくなる一冊だった。

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