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彼女たちの場合は*江國香織

  • 2019/07/15(月) 07:57:26

彼女たちの場合は
彼女たちの場合は
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江國 香織
集英社
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「これは家出ではないので心配しないでね」
14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。日本の高校を自主退学した逸佳は“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だったから。
ボストン、メインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、二人の旅は続いてゆく――。
美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える、江國香織二年ぶりの長編小説。


472ページというボリュームを全く感じさせない物語である。17歳と14歳の日本人の従妹同士が、書置きを残してアメリカを旅しながら見て歩く、という、言ってみればそれだけのストーリーなのだが、二人のつながりや、旅先で出会う人びととの関わり方や価値観の違い、同じものを観たときの二人の受け止め方の違いなど、興味深い事々があふれており、しかも、日常や非日常のほんの些細な引っ掛かりも見逃さずに、極めて自然に描き出しているのは、著者ならではだと思う。折々に挿みこまれる彼女たちそれぞれの留守家庭(特に両親)の受け止め方の変化や家族の在り方の変化も興味深い。さらには、ふとしたところに示唆される彼女たちのこれからのことに、読み終わった後も思いを馳せることができ、ちょっぴりドキドキさせられもする。ひとり旅立ったらおそらく得られなかったたくさんのことを、二人だからこそ手に入れられたのだろう。勇気、不安、心細さ、安心感、などなどさまざまな感情を動かされる一冊だった。

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