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やさしい訴え*小川洋子

  • 2005/03/31(木) 14:24:54

☆☆☆・・


夫の浮気によって居場所を失った瑠璃子は母の持ち物である別荘へ家出をする。
そして、近所に住みチェンバロを作っている新田氏と出会い、静かに緩やかに(あるいは一瞬の内に激しく)惹かれてゆくのだが、彼にはともにチェンバロを作る共同作業者としての薫さんという大事な存在がいて、深くしっかりと結びついている。

ストーリーの骨組み自体はどうということもない珍しくもないものなのだが、小川洋子さんによって丁寧につけられた肉は、繊細で狂おしくもどかしく崇高で、時に神聖とも言えるものである。
人の一生に勝ち負けなど決められないが、敢えて言うならば、瑠璃子は恋では負けたのだろう。しかしこの別荘への家出が彼女が生きる上でなくてはならないことだったことを考えると、瑠璃子は自分には勝ったのかもしれない。

風景描写がとてもすばらしい。
時間が流れるのを感じなくなるくらい何も動かないところで何かを考えたり、何も考えなかったりしてみたいものだ。

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