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亥子コロコロ*西條奈加

  • 2019/09/20(金) 19:05:52

亥子ころころ
亥子ころころ
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講談社 (2019-06-25)
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味見してみちゃ、くれねえかい? 読んで美味しい“人情”という銘菓。“思い”のこもった諸国の菓子が、強張った心を解きほぐす――。親子三代で営む菓子舗を舞台に、人の温もりを紡いだ傑作時代小説!武家出身の職人・治兵衛を主に、出戻り娘のお永、孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。全国各地の銘菓を作り、味は絶品、値は手ごろと大繁盛だったが、治兵衛が手を痛め、粉を捏ねるのもままならぬ事態に。不安と苛立ちが募る中、店の前に雲平という男が行き倒れていた。聞けば京より来たらしいが、何か問題を抱えているようで――。吉川英治文学新人賞受賞作『まるまるの毬』待望の続編!


表題作のほか、「夏ひすい」 「吹き寄せる雲」 「つやぶくさ」 「みめより」 「関の戸」 「竹の春」 

今作でも、治兵衛が諸国を旅して見覚えたご当地菓子がおいしそうである。しかも今作では、店前で行き倒れていたところを助けた、雲平という菓子職人と案を出し合いながら拵えた趣向を凝らした菓子が、目新しくもあり前作に増しておいしそうで、列を作る客の評判も上々である。雲平が行き倒れていた事情を解決するという大きな目的が、物語全体を通してまずあり、それに絡んだあれこれや、人と人との情の通い合い、親子の心情、などなど、いろいろな興味をかきたてられる。登場人物は善人ばかりだが、だからと言って問題が起こらないということはないのだなぁと思い知らされる。ラストは思わず頬が緩む展開で、あたたかい気持ちになれる一冊でもある。

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