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うしろから歩いてくる微笑*樋口有介

  • 2019/10/06(日) 07:24:30


鎌倉在住の薬膳研究家と知り合った俺・柚木草平。10年前に失踪した同級生の目撃情報が鎌倉周辺で増えているので調べてほしいと、彼女はいう。早速鎌倉の〈探す会〉事務局を訪ねるが、これといった話は聞けなかった。ところがその晩、事務局で会った女性が殺害されてしまう。急遽、失踪事件から殺人事件に調査を切り替えた柚木が見つけた真実とは? 月刊EYESの小高直海らおなじみのキャラクターに加え、神奈川県警の女性刑事など今回の事件も美女づくし。『彼女はたぶん魔法を使う』からおよそ30年、円熟の〈柚木草平〉シリーズ第12弾。


相変わらず、女性にだらしなく、ふらふらちゃらちゃらしているように見える柚木草平ではある。いい加減この性癖は何とかならないものかとは思いながらも、それが時にはうまい具合に潤滑剤になって、調査が進展することもあることから思えば、ある意味柚木の戦法とも言えるのかもしれないので、まあ一応は容認することにする。見かけとは違って、仕事はきっちりこなし、些細な端緒から事実を導き出す能力には相変わらず長けている。そして、元刑事とは言え、必ずしも真実を法に照らし合わせて罰することを第一義とはしないところも、独特である。罪は罪であろうが、今後の関係者の幸福をいちばんに考えているのだろうことが、(警察的には異論があろうが)好ましくもある。それにしても、「B」に対する嫌悪感はどうしたものだろう。物語に詳細は描かれていないが、二度と立ち直れない仕置きをしてほしいものである。いささか進展にまどろっこしさは感じたが、最後はすっと腑に落ちた一冊である。

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