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わずか一しずくの血*連城三紀彦

  • 2019/11/03(日) 13:33:00

わずか一しずくの血
わずか一しずくの血
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連城 三紀彦
文藝春秋
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薬指に結婚指輪をはめた左脚の白骨死体が山中で見つかり、
石室敬三とその娘は、その脚が失踪した妻のものだと確信する。

この事件をきっかけに、日本各地で女性の身体の一部が発見される。
伊万里で左腕、支笏湖で頭部、佐渡島で右手……それぞれが別の人間のものだった。
犯人は、一体何人の女性を殺し、なんのために遠く離れた場所に一部を残しているのか?
壮大な意図が、次第に明らかになっていく。


流れる空気は全体を通して暗く重いものである。時代の負った罪とでもいうようなものを、全身で憎み恨んでしまったひとりの男と、彼の周りで、知ってか知らずかに関わらずその空気に呑み込まれた人たちの復讐劇というような印象である。まるで、日本という国の負の記憶を一身に背負ってしまったかのような悲壮感と、ある種使命感のようなものが、彼を突き動かす原動力になっているとしか思えない。哀しく重苦しく、切なく澱んだものが折り重なったような一冊だった。

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