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屑の結晶*まさきとしか

  • 2019/12/10(火) 12:25:10


「誰を殺そうと俺の自由」小野宮楠生は二人の女性を殺害した容疑で逮捕・起訴され、チャラい外見とふざけた供述から「クズ男」と呼ばれている。弁護士の宮原貴子は、小野宮が幼少期を過ごした町へ赴き、ある女性の存在をつかむ――。聖と悪のボーダーをゆるがす哀切のミステリー長編。



一見すれば誰にでも判るような殺人事件の裏に、実はこんなにも複雑な体験とそれに伴う心理状態が潜んでいようとは。起きたことの判りやすさとは逆に、終始、座りの悪い不安定な何かを感じていたのは、弁護士の貴子だけではなく、読者も同じである。楠生の態度や反応は、ステレオタイプでありながら、底の読めない空恐ろしい昏さを内包している気がして、その掴みどころのなさ故に、地団駄踏みたくなるようなもどかしさを感じてしまう。しかし、ある点を突かれると意外にも脆い一面をのぞかせることに気づいたとき、事件の真相はぐっと近づいてくるのである。幼児体験の影響力のすさまじさとともに、人の心の奥底をのぞき込む怖さをも味わわされる一冊である。

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