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人間*又吉直樹

  • 2019/12/12(木) 12:15:03


僕達は人間をやるのが下手だ。38歳の誕生日に届いた、ある騒動の報せ。何者かになろうとあがいた季節の果てで、かつての若者達を待ち受けていたものとは?初の長編小説にして代表作、誕生!!


著者が有名人であるがゆえに、どうしてもご本人に重ねて読んでしまいがちではあるが、どの登場人物も当てはまるようでいて当てはまらず、当てはまらないようでいて当てはまってしまうのだ。著者に限らず、作中の人物には多かれ少なかれ作者自身の成分が投影されているということだろう。人間という、ひとくくりにするには厄介すぎる生きものを語るのは至難だと思う。だが、誰もが少なくとも一度は、潜り抜けたであろうと思われる、自分とは何者かという命題について、そして、それを考えたときに頭をよぎるであろう答えに似たものは描かれているように思う。「凡人Aの罪状は、自分の才能を信じていること」というのが、ひとりの人間の中にある矛盾と葛藤をよく言い表していると思う。他人の悩みを見せつけられてイラっとするところもなくはないが、それもまた人間、と思わされる一冊でもあった。

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