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罪の轍*奥田英朗

  • 2019/12/24(火) 20:48:37


刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞く――。世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。


587ページという大作である。だが、終始飽きさせず、次の展開を知りたくてページを繰る手が止まらなくなる。帯の惹句を見ただけで、あの事件がモチーフなのだろうということは判るが、大枠は別として、細部はまったく別の物語である。そして、何より興味深いのは、早い段階から真犯人と目されながら、さっぱり捉えどころのない宇野寛治のことである。罪の意識があるのかないのか、嘘をつくつもりがあるのかないのか、善悪の判断がつくのか憑かないのか、知能犯なのか莫迦なのか。寛治の行動のひとつひとつが、どれをとってもちぐはぐで、ひとつの人格に収まり切らない印象なのである。それゆえになおさら、寛治のことを知りたくて、先を急ぎたくなるのである。舞台となった時代背景も現在とはかなり違うので、今なら到底許されないだろう差別的な言葉も多用されるが、その時代の混沌をよく表しているとも思える。やりきれないことだらけの事件だが、通い合った情も確かにあったのだと、ほんの少し救われた気もする。とても重いが興味深い一冊だった。

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