fc2ブログ

Iの悲劇*米澤穂信

  • 2020/02/24(月) 16:21:30


一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつも―。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ。


限界を超えて人がいなくなった集落に、定住者を募り、村を活性化させるという市長肝いりのプロジェクト「甦り課」に配属された万願寺の視点で描かれる物語である。予想以上の応募者があり、何とか移住者がやってきて、村の体裁が整いつつある蓑石村だったが、住民間に次々と問題が発生し、万願寺が新人の観山とともに奔走するが、その甲斐空しく、次々に転居者が出てしまう。どうする万願寺、どうする甦り課、というところだが、途中から、ふとある人物の行動の怪しさに気づいてしまう。それがどういう理由によるものかが空かされるのは最後の最後なのだが、そういうことだったのかと腑に落ちる思いと、そんな七面倒くさいことを、とあきれる思いとが相半ばする。ともかく、駆け引きのあれこれが興味深い一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する