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サマー・キャンプ*長野まゆみ

  • 2020/05/13(水) 16:30:51


「愛情など、断じて求めない、はずだった」 体外受精で生まれた温は出生の秘密を自らの手で明かそうと決意するのだが…。近未来を舞台に、人間が種として背負うべき未来への責任を問う書き下ろし長編小説。


近未来の物語だが、人間が自らの遺伝子を操作することに高いレベルで熟達すれば、現実問題としてこんな状況が決して珍しいことではない世の中になるのかもしれない、と戦慄さえ覚える。自然な営みや、本能としての愛の探求。そんなものが、懐かしい過去の話になってしまう日が来るかもしれないというのは、恐ろしさもあり、寂しさもある。そして、彼らが抱える葛藤は、決して彼ら自身が望んだことではないのであり、その理不尽さには胸が痛む。もがきながら懸命に自分を探して生きている彼らが、愛おしくもあり哀しくもある。この世界に幸福はあるのだろうか、と考えさせられる一冊でもある。

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