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小説 「安楽死特区」*長尾和弘

  • 2020/06/06(土) 16:48:05


~日々、死と向き合っている医師だから書けた、現代人のエゴイズム、そして愛と情~

まだここだけの話、ということで“安楽死特区”構想についてざっくり説明しますね。国家は、安楽死法案を通そうと目論んでますよ。なぜなら、社会保障費で国が潰れそうだからです。しかし国民皆保険はどうしても維持したい。それならば、長生きしたくない人に早く死んでもらったほうがいい、そう考えています。ベストセラー医師による、初の本格医療小説。


日進月歩する医療の進歩と超高齢化社会という、ありがたいのかそうでないのか判断に迷う現実に切り込んでいて興味深い。ひと昔前は、当たり前のように施されてきた延命治療であるが、それを選ばない自由は保障されつつある現代ではある。だが本作には、2025年という、間近に迫った未来に起こり得る現実が描かれていて、目前に迫っているだけに切迫感がある。開業医の鳥居が言うように、枯れるようにして逝けるのがいちばんだろうが、なかなかそうはいかない現実で、安楽死という選択がどう扱われるのか、わが身のこととなった時にどうするのか、さまざま考えさせられる。医療現場のことはともかく、政府の目論見があまりにも身勝手で、呆れかえる。改めて、ぴんぴんころりで逝きたいと思わされた一冊である。

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