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うちの父が運転をやめません*垣谷美雨

  • 2020/06/09(火) 18:55:53


「また高齢ドライバーの事故かよ」。猪狩雅志はテレビニュースに目を向けた。そして気づく。「78歳っていえば…」。雅志の父親も同じ歳になるのだ。「うちの親父に限って」とは思うものの、妻の歩美と話しているうちに不安になってきた。それもあって夏に息子の息吹と帰省したとき、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、あえなく不首尾に。通販の利用や都会暮らしのトライアル、様々な提案をするがいずれも失敗。そのうち、雅志自身も自分の将来が気になり出して…。果たして父は運転をやめるのか、雅志の出した答えとは?心温まる家族小説!


高齢の親の運転に不安を覚え、やめさせたいと思うが、一筋縄ではいかずに試行錯誤する顛末を軸に、親元を離れて東京で家族と暮らす息子一家の実情とこれから、息子自身の生きがいを絡めた物語である。
どんどん過疎化して、買い物や病院通いにも車が必要な田舎で、高齢の親に運転をやめさせる難しさは想像を絶する。運転をやめれば、その日から暮らしが成り立たなくなるのは目に見えている。さらには、外にも出なくなり、人とのかかわりも絶たれて、なんのために生きているかさえわからなくなりそうなのである。何とかしなければ、と思うが、どうすればいいか思案するばかりの息子・雅志は、田舎に暮らす同級生たちの暮らしぶりを見聞きし、移動スーパーひまわり号に出会ったことで、自らの生き方をも見直すことになる。そしてそれとともに、ぎこちなかった高校生の息子・息吹との関わり方にも変化が現れ、両親や地域の人たちとの関わり方も変わってくるのだった。いささかうまく運びすぎな感は否めないが、「いつか」を待ちわびるよりも、「いま」を生きることの大切さを前向きに考えるきっかけになる一冊ではないだろうか。

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