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合唱 岬洋介の帰還*中山七里

  • 2020/06/20(土) 19:06:26


幼稚園で幼児らを惨殺した直後、自らに覚醒剤を注射した“平成最悪の凶悪犯”仙街不比等。彼の担当検事になった天生は、刑法第39条によって仙街に無罪判決が下ることを恐れ、検事調べで仙街の殺意が立証できないかと苦慮する。しかし、取り調べ中に突如意識を失ってしまい、目を覚ましたとき、目の前には仙街の銃殺死体があった。指紋や硝煙反応が検出され、身に覚えのない殺害容疑で逮捕されてしまう天生。そんな彼を救うため、あの男が帰還する―!!


誰が主人公になってもおかしくないようなキャスティングであり、実際に、読み始めてしばらくは、主役と思しき人物が何度か入れ替わるような展開になっている。さらに言えば、主題も、これかと思えば覆され、そう来たかと思わせておいて、さらに違う展開に持ち込まれるという、嬉しい裏切りが満載である。なにより、岬洋介が突然帰国したにもかかわらず、レコーダーに吹き込まれたたった一音しかピアノが出てこないのである。そして、そんなことさえ忘れさせられるほど、彼の活躍に目を惹かれ、惹きこまれるのである。御子柴も(普段とはいささか別の意味で)いい仕事をしてい、好感度アップである。贅沢な一冊である。

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