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天国旅行*三浦しをん

  • 2020/07/01(水) 16:32:54


現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意―。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。


タイトルの軽快さとは裏腹に、「心中」が題材の物語である。ひと口に心中と言っても、そこに辿り着くまでの道筋は、千差万別。心中の数だけわけがあり、心中の数だけ憂いがあり、心中の数だけ葛藤がある。そんな一筋縄ではいかない心中に至る心の闇と、決意してからのあれこれが淡々と描かれている。ただどの物語も、人生に見放されました、ここで終わりにします。などという簡単なものではなく、心中その後があるのがミソなのかもしれない。生きていくとは何かを考えてみたくなる一冊である。

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