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流星シネマ*吉田篤弘

  • 2020/09/03(木) 16:18:59


都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町。僕はその町で、“流星新聞”を発行するアルフレッドの手伝をしている。深夜営業の“オキナワ・ステーキ”を営むゴー君、メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん、「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君、ロシアン・コーヒーとカレーが名物の喫茶店“バイカル”を営む椋本さん、ガケ上の洋館で、“ひともしどき”という名の詩集屋を営むカナさん―。個性的で魅力的な人々が織りなす、静かであたたかな物語。


ガケ下の町の成り立ちや、町や、そこで暮らす人々の抱える事々。それぞれに悲しみや苦しみや懊悩を胸に秘めつつ、ときに、見えないものを見、聞こえないものを聞きながら、静かに穏やかに日々を過ごしているように見える。だが、何か足りないものを、誰もが探しているのかもしれない。そんな気がする。最後に辿り着いた、みんなの足りないものが、それぞれにある程度満たされるように思われる場所で、これからも彼らは静かに穏やかに暮らしていくのだろうと思わせてくれる一冊である。

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