fc2ブログ

ヒポクラテスの試練*中山七里

  • 2020/09/06(日) 16:08:32


偏屈だが解剖の腕は超一流の光崎藤次郎教授が率いる浦和医大法医学教室に、城都大附属病院の内科医・南条がやって来た。前日に搬送され急死した前都議会議員・権藤の死に疑問があるという。肝臓がんが死因とみられたが、九カ月前に受けた健康診断では問題がなかった。捜査に駆り出された埼玉県警の古手川は、権藤の甥が事故米を使って毒殺を目論んだ証拠を掴む。しかし、光崎が司法解剖から導き出した答えは恐るべき感染症だった!直後、権藤の周囲で新たな不審死が判明。感染源特定に挑む新米助教・栂野真琴が辿り着いた驚愕の真実とは―!?


原因も状況も違うが、まさにいま読むために書かれたようなストーリーである。良いのか悪いのかは別にして、エキノコックス感染症でパンデミックになった時の状況が想像しやすい。パンデミックを封じるために動く光崎教授と研究室のメンバーの必死さ。それに比べて、感染元を疑われる都議会の面々の歯切れの悪さ。アメリカにまで渡った調査の過程で目にし、耳にした事々の醜悪さ。人間の弱さ醜さ、自己保身、プライド、などなどあまりにも多くの要素が絡み合った結果の、悶絶死なのである。思わず目を覆いたくなる。読後感は決して良くはないが、人の命を救うことにかける情熱がぐいぐいと伝わってくる一冊ではある。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する