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雲を紡ぐ*伊吹有喜

  • 2020/09/07(月) 19:00:58


壊れかけた家族は、もう一度、ひとつになれるのか?羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布」ホームスパンをめぐる親子三代の心の糸の物語。


互いの心のなかを慮ることができず、言葉に現れたものだけでしか判断することができなくなっていた父と母と娘。互いに様子を窺うような家族に、もはや安らぎはない。しかも――だからこそなのかもしれないが――、職場や学校も、安らげる場所ではなくなり、次第に逃げ場がなくなっていく。そんな折、高校生の娘・美緒は、ふとしたきっかけで、父方の祖父がホームスパンの工房を持っている岩手に家出同然にやってくるのである。そこで、糸を紡ぐことのすばらしさに出会って、自分の心の赴くままに何かをやることの楽しさを知り、ほんの少しずつだが、凝っていたものが柔らかくなって、一歩ずつ前へ進める糸口を見つけられそうな気持になるのだった。何ものでもなかった一本の糸が、織られてなにかになっていくように、人と人も、撚り合わされることで強くなれるのかもしれないと、心強く思える一冊だった。

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