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毒島刑事最後の事件*中山七里

  • 2020/09/23(水) 13:25:55


刑事・毒島は警視庁随一の検挙率を誇るが、出世には興味がない。一を話せば二十を返す饒舌で、仲間内でも煙たがられている。そんな異色の名刑事が、今日も巧みな心理戦で犯人を追い詰める。大手町の連続殺人、出版社の連続爆破、女性を狙った硫酸攻撃…。捜査の中で見え隠れする“教授”とは一体何者なのか?動機は怨恨か、享楽か?かつてない強敵との勝負の行方は―。どんでん返しの帝王が送る、ノンストップミステリ!


犯人としては、こんなに厭な取り調べはないだろうと、思わず同情してしまいたくなるくらい、ねちねちと執拗で、人間性の根底から否定してかかるような、ある種嫌がらせ全開の手法である。作戦というか、これはもう、毒島刑事の身の裡からにじみ出るものかもしれない。普段の一見した人当たりの良さとのギャップが、なおさら厭らしさを増幅しそうである。だが、その思いは、終始一貫していて、ぶれることがないので、読者としては、犯人がどんなふうに落ちていくかを手に汗握りながら見守ればいいが、上司の麻生は、いつも冷や汗ものであろうことは想像に難くない。自分が犯人にならない限り、格好いい毒島刑事なのである。読み応えのある一冊だった。

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