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向こう側の、ヨーコ*真梨幸子

  • 2020/10/30(金) 16:47:29


独身を謳歌する陽子には幼い頃からよく見る夢があった。それは、もう一人の私、かわいそうなヨーコが出てくる夢。一方、夫と子供の世話に追われる陽子は愚痴ばかりこぼす毎日を送っていた。境遇の異なる二人の陽子の人生が絡み合う、イヤミスの傑作!


CHAPTERごとにA面とB面があって、その度に場面が転換する。A面は、独身を謳歌している小説家の陽子。B面は、結婚して子供もいる陽子。こちらは、A面の陽子の夢の中の世界らしいのだが、読み進めるうちに、存在感がものすごくリアルになってきて、どちらが現実なのか夢なのか、頭の中がぐるぐるしてくる。その理由のひとつは、関係性こそ違っているが、登場人物がほぼ同じだということだろう。さらには、関係性が違っても、その人物に対する陽子の感情が似通っているので、さらに境界が曖昧になっているのかもしれない。夢の中のはずの世界で起こったことが現実にも起こったり、どちらがどちらかめまいがしそうでもある。どちらの世界でも、陽子の周りで次々に起こる殺人事件。真犯人は、途中で予測できたが、最後の最後に現実に立ち戻らせてくれたのも、その犯人だったと言える。結局は、すべては自分の身から出たことなのではなかったのか。もどかしく、苛立たしく、厭な気分にさせられる一冊だった(誉め言葉であるのはもちろんだ)。

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