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ハッピーライフ*北大路公子

  • 2020/12/17(木) 07:48:24


朝、夫は見知らぬ人になっていた――という第一話から、ページを繰る手が止まらなくなる本です。喜びも悲しみも絶望も希望もない〈穏やかで均された世界〉とはいったい何か? 北大路公子が描かずにはおれなかった〈もう一つの日常〉に心揺さぶられること請け合い。濃密な連作短編を堪能してください。


何気なく穏やかに語られる物語なのだが、描かれている内容はと言えば、わたしたちがよく知っている世界とは、ほんの少しずれていて、読み進めれば読み進むほど、胸の中に得体の知れないぞわぞわ感が根を張っていくようである。それでも物語のなかの日常は、それなりに穏やかに営まれており、それがさらに、どうすればいいのだろうという焦燥感のようなものを抱かせる。知らず知らずのうちに、制御の利かない何ものかに取り込まれていくような印象の一冊である。

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