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かわうそ堀怪談見習い*柴崎友香

  • 2020/12/20(日) 16:44:18


読みかけていた本が、―ない。思い出さないほうがいい記憶が―よみがえる。別の世界との隙間に入り込んでしまったような。見慣れた風景の中にそっと現れる奇妙なものたち、残された気配。怖い日常。芥川賞作家が「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談集。


恋愛小説家というレッテルを張られるのが嫌で、怪談小説家に転向しようとしている谷崎友希は、中学の同級生だったたまみに、怖い話を知っている人を紹介してもらって話を聞いたり、町中で聞き耳を立てたりしながら、怪談のネタを探していた。友希自身は、いわゆる視える人ではないと思っているのだが、何となく不思議な感覚にとらわれることが多くなっているような気がしている。たまみの思わせぶりな言葉も気になるところである。怪談というよりは、日常の隙間に現れる不思議な事象、という感じではあるが、いつのまにかそちら側にするりと入り込んでいる感じに背筋が寒くなる。淡々と穏やかに語られながら、実は恐ろしいことが語られているような気がする一冊だった。

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