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境界線*中山七里

  • 2021/02/16(火) 09:38:27


2018年刊行の『護られなかった者たちへ』と同じく宮城県警捜査一課を舞台に、東日本大震災による行方不明者と個人情報ビジネスという復興の闇を照らし出していく。震災によって引かれてしまった“境界線”に翻弄される人々の行く末は、果たして。「どんでん返しの帝王」・中山七里が挑む、慟哭必至の骨太の社会派ヒューマンミステリー小説。


その場にいなかった者には、到底計り知れないダメージが、それを経験した人たちそれぞれに深く重く刻みつけられていることは想像できる。逆に言うと、想像することしかできない。だからこそ、本作で描かれている事々を、平時の常識に当てはめて考えることは難しい気がする。より深く昏い闇が、追われる者の心にも追う者の心にも沈んでいるのだろうと思われる。だからといって、犯罪を犯していいという理屈にはならないが、切なくやりきれない思いが拭いきれないのも確かである。永遠にすっきりすることはない気持ちなのだとは思う。それでも生きることの苦悩がにじみ出る一冊だった。

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