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ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と空白の時~*三上延

  • 2021/02/17(水) 18:36:06


ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本―横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める―。


栞子と大輔の娘・扉子が祖母の智恵子に呼び出され、馴染みのカフェで頼まれて持ってきた本を読んでいるという設定。物語はほとんどその本の内容である、栞子と大輔が、消えた横溝正史作品を探し出すという依頼を解く物語、という入れ子構造の趣向である。サブタイトルに扉子が出ているのは、智恵子によって本好きの闇の世界に引きずり込まれそうな予感が色濃く漂っているからだろう。栞子と大輔の心配の種は尽きないのである。肝心の事件は、横溝の世界さながらに、親族の骨肉の争いやら、双子の入れ替わりやら、怪しげな気配に満ち満ちているのだが、九年越しで解いた謎の先に(というか大元に)いたのは智恵子だったという、歯噛みしたくなるような結末ではある。栞子・智恵子母子の確執極まれり、という感じである。今後は扉子も否応なく巻き込まれていくのだろう。次も愉しみなシリーズである。

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