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クスノキの番人*東野圭吾

  • 2021/03/02(火) 18:40:47


その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。 その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。


謎解き要素は、佐治親子の辺りにほんの少しあるだけで、ミステリというのは当たらないような気はするが、不思議な力を持つクスノキを巡る人間ドラマという感じだろうか。職場のものを盗んで捕まった、ほぼ交流のなかった義妹の息子を、大切なクスノキの番人にしようとするのも無謀だし、何の説明もなく大役につけるのもリスクが大きいように思うが、まあ何かの力が働いたのだと思うことにしよう。その後の千舟と玲斗の関係性の変化や、玲斗の行動の変化(こんなにうまくいくものだろうかという思いはあるが)には、興味を惹かれる。クスノキの祈念のことを知るにつれ、玲斗の心構えも次第に変わってきて、自覚が出てくるのが目に見えて、応援したくもなる。自分で念を預けようとは思わないが、それを受けて救われる人もいるのだと、あたたかい気持ちにもなる。重くはあるが、未来のある一冊だと思った。

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