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馬鹿と嘘の弓*森博嗣

  • 2021/03/21(日) 18:28:34


探偵は匿名の依頼を受け、ホームレス青年の調査を開始した。対象は穏やかで理知的。危険のない人物と判断し、嵐の夜、街を彷徨う彼に声をかけた。その生い立ちや暮らしぶりを知るにつれ、何のために彼の調査を続けるのか、探偵は疑問に感じ始める。青年と面識のあった老ホームレスが、路上で倒れ、死亡した。彼は、1年半まえまで大学で教鞭を執っていた元教授で、遺品からは青年の写真が見つかった。それは依頼人から送られたのと同じものだった。


久々の森作品なので、ほかの作品との相関関係は全くわからず、純粋に物語だけを愉しんだ。登場人物がそれぞれに、濃淡の差こそあれ、どう生きてきて、どう生きていくかを思いあぐね、自分と世の中のすり合わせ方を模索しているような印象である。理不尽さを抱きながら、歩み寄っていくのか、それともとことん理不尽と対峙するのか。正解のない問題を解き続けるような心持ちにさせられる。いつも何かが不安で、その原因を突き止めようとするほど、答えが遠のくようなもどかしさもある。誰が正しいのか、何が正解なのか、いつどの時点からやり直せばいいのか、それともそんなことはまったく無駄なのか。読めば読むほど迷宮に迷い込むような一冊である。

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