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処方箋のないクリニック*仙川環

  • 2021/05/09(日) 13:32:00


先端医療では治せない人生を再建します!

『感染』で第1回小学館文庫小説賞を受賞。医療ミステリーの第一人者仙川環が贈る新境地。
月刊『本の窓』連載中から「我が家の事のよう」と話題を呼んだ作品待望の単行本化。
東京郊外にある古びた洋館。そこには先端科学では治せない患者と家族の「人生」を治療する名医がいる。凄腕、イケメンだけど、ちょっと変わり者の医師青島倫太郎。目が悪くなったのに車の運転をやめない父。怪しげなサプリにはまる母。仕事のストレスで血圧が上がった息子。民間治療に心酔した妻……。そんな患者を持つ家族たちはどうしたらいいのか。マドレーヌと紅茶の香る古い洋館の診察室を訪れた患者と家族は、青島と話をするうちに、隠していた心の内を打ち明けてしまう……。現代の赤ひげ先生が、鮮やかに患者と家族のトラブルを解決するハートウォーミングお医者さん小説。


近年とみに評判がよくなっている設備の充実した中核病院の長男でありながら、病院から出て、敷地の隅の廃屋でよろず相談所のような総合心療内科を開いた青島倫太郎の物語である。立派な権威をもちながら、ひけらかさず、患者(=相談者)に寄り添って、その悩みを解決に導く姿勢は、よりどころを探しあぐねていた人たちにとってのこの上ない救いだとおもう。顔を見て、話を聞くところから治療が始まるのだという、医療の根源が示されたような気がして、胸がすっとする。倫太郎先生とミカちゃんの奮闘をもっと見たくなる一冊である。

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