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三人屋*原田ひ香

  • 2021/05/16(日) 18:34:27


朝は三女・朝日の喫茶店、昼は次女。まひるのうどん屋、夜は長女。夜月のスナック――
可笑しくて、ホロリとしみる、商店街の人情ドラマ

お年寄りの多いラプンツェル商店街で、「ル・ジュール」が再開店した。
時間帯によって出すものが変わるその店は、街の人に「三人屋」と
呼ばれているが、店を営む三姉妹は、そのことを知らない。
近所に住むサラリーマンは三女にひと目ぼれ、
常連の鶏肉店店主は出戻りの幼なじみにプロポーズ、
スーパーのイケメン店長の新しい恋人はキャバ嬢で!?
ひとくせも、ふたくせもある常連客たちが、今日も飽かずにやって来る……。
心も胃袋もつかむ、おいしい人情エンターテインメント!


シリーズ二作目を先に読んでしまったので、個人的にはそうは思わないが、初めに本作を手にしたとしたら、仲好し三姉妹がおいしい料理を出すお店をめぐるほのぼのとした物語だと想像したことだろう。だが実際は、三姉妹は仲が悪いというか、関係性が薄く、接点も乏しく、互いに距離を置いているような印象で、決して仲好し三姉妹ではないのだった。おいしいものを出す店をやってはいるが、三人三様、業態も時間帯もばらばらで、唯一の共通点は、両親が残した店という「場」だけなのである。とは言え、三姉妹はそれぞれ持ち味は違うが魅力的なのだが、三人屋に集まってくる男たちは、揃いも揃ってろくでもないのが不思議である。登場人物全員に共通するのは、誰もが何らかの欠落感を抱えており、少しでもそれを埋めることを求めているということかもしれない。そして、家出を繰り返して、ラプンツェル商店街にいることが少ない長女夜月が、いちばんこの町や志野原家での存在感がありそうなのが、不思議なのだが、当然でもあるような気がする。ともかく、夜月が帰ってきてよかったと思うシリーズ一作目である。

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