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物語のなかとそと*江國香織

  • 2021/06/08(火) 16:15:44


読むことと、書くことにあけくれて暮らす著者の日常は、現実を生きている時間より、物語のなかにいつ時間のほうがはるかにながい。散歩も、旅も、お風呂も、その延長のなかにある。

掌編小説と 全身で拾い集めた世界じゅうの瑣末なものものについて書かれた文章たち。著者の創作と生活の「秘密」がひもとかれるスリリングな散文集。

「すばらしい本を一冊読んだときの、いま自分のいる世界まで読む前とは違ってしまう力、架空の世界から現実にはみだしてくる、あの途方もない力。それについて、つまり私はこの散文集のなかで、言いたかったのだと思います」(あとがきより)


短いエッセイや物語が次から次へと表れて、どきどきしてしまう。しかも、もちろんそのどれもに著者がいて、江國香織という人の目を通して世界を見ているような心地にさせられる。子どものころは「世界に直接手を触れていた」なんて、本当にそう思うし、他にも、うなずかされる箇所がいくつもいくつもある。タイトルのつけ方も秀逸で、これ以外ではありえない。素敵な一冊。

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