fc2ブログ

書店員と二つの罪*碧野圭

  • 2021/06/16(水) 18:28:30


ベストセラー「書店ガール」シリーズの著者が描く、慟哭のミステリー
書店員の椎野正和は、ある朝届いた積荷の中に、少年犯罪者の告白本があるのを知って驚く。それは、女子中学生が惨殺され、通っている中学に放置された事件で、正和の同級生の友人が起こしたものだった。しかも正和は、犯人の共犯と疑われてしまい、無実が証明された後も、いわれなき中傷を受けたことがあったのだ。書店業界が「売るべきか売らないべきか」と騒然とする中、その本を読んだ正和は、ある違和感を覚えるのだが……。
出版・書店業界の裏事情を巧みに盛り込んだ、著者渾身の長編小説。


書店とその周辺で起こる事件の謎解き物語かと思って読み始めたのだが、まったく違うショッキングな事件をめぐるシリアスな物語だった。殺人事件を起こした者の身近にいた人たちの、事件後の苦しみや葛藤、事件のことは聞きたくないが、真相を知りたいという欲求のはざまで揺れ動く心を制御できなくなる辛さ。真につらいことを封印する脳の働きと、封印が解けたときの衝撃など、胸に迫る場面が数多くあり、考えさせられることだらけで、正義と信義のバランスをどうすればいいのかに悩み、自分だったらどうするかと考えるも、答えを出すのは難しすぎて、思わずうなってしまう。スカッとはしないが、遥か先に光が見えた気がして、ほんの少しほっとした一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する