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白鳥とコウモリ*東野圭吾

  • 2021/06/19(土) 19:44:40


遺体で発見された善良な弁護士。
一人の男が殺害を自供し事件は解決――のはずだった。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
2017年東京、1984年愛知を繋ぐ、ある男の"告白"、その絶望――そして希望。
「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」
私たちは未知なる迷宮に引き込まれる――。


522ページという分量を感じさせられずに一気に読んだ。第一段階は、あっという間に事件が片付いてしまい、はて、連作短編だったか、と一瞬思ってしまったが、本当の事件の始まりはそこからだった。警察も、検察も弁護士も、被疑者の自白があるので、殺人事件の事実を争うつもりは初めからなく、そのままならば、すんなりと判決が出てしまうような流れである。自白というものがどれほど重要視されているかを思い知らされるようである。だが、被害者、加害者双方の身内が違和感を抱き、行動を起こした。それによってあぶりだされた真実とは。想像もしなかった事実を目の当たりにして、何をどう考えていいか戸惑うが、真犯人の真の動機が明らかになった時には、さらにどう反応していいか判らなくなった。現代的(という言葉が即しているかは自信がないが)な精神性の象徴なのかもしれないが、こうしなくてもよかったような気がしなくもない。正直ショックであり、悩ましい。ただひとつ言えるのは、最悪なのは、一連の事件の大本である灰谷社長なのは間違いないということである。そして、真実が明らかになった後の、物語の終わらせ方は、いささか散漫な印象がなくもない。とはいえ、一気に読ませる面白さであることは間違いない一冊である。

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