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にぎやかな落日*朝倉かすみ

  • 2021/08/08(日) 07:15:34


北海道で独り暮らしするおもちさん、83歳。夫は施設に入り、娘は東京から日に二度電話をくれる。実は持病が悪化して、家族がおもちさんの生活のすべてを決めていくことに。不安と寂しさと、ほんのちょっとの幸せと、揺れては消えるひとりの老女の内面に寄り添う、人生最晩年の物語。


身につまされる物語である。日ごとに老いていき、自分で思う自分と現実の差が少しずつ広がっていくもどかしさや不甲斐なさが、手に取るように伝わってくる。加えて、配偶者など身近な人がそばにいなくなったりすると、その喪失感もかなり大きいと思われる。おもちさんは、元来明るく社交的で、友人知人も多いが、普段から人づきあいが少ないと、なおさら孤独感を募らせることになるだろう。おもちさんは、蓄えもあるようだし、家族や周りの人にも恵まれているようで、比較的しあわせである。ただ、日ごろからもう少し自分の身体に向き合っていたほうがよかったかな、とは思う。老いは誰にでも確実にやってくることである。日頃から心構えをしっかりしておかなくては、と改めて思わされる一冊だった。

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