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曲亭の家*西條奈加

  • 2021/08/22(日) 09:23:32


直木賞受賞後第一作
渾身の書き下ろし長篇。
小さな幸せが暮らしの糧になる。

当代一の人気作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。
作家の深い業にふり回されながらも己の道を切り開いていく。

横暴な舅(しゅうと)、病持ち・癇癪(かんしゃく)持ちの夫と姑(しゅうとめ)……
修羅の家で見つけたお路の幸せとは?
「似たような日々の中に、小さな楽しみを見つける、それが大事です。
今日は煮物がよくできたとか、今年は柿の木がたんと実をつけたとか……。
そうそう、お幸(さち)が今日、初めて笑ったのですよ」(本文より)


傍から見れば、人も羨む良縁のように思われるが、その実、家内は、舅の横暴、姑の癇癪、夫の癇癪と病と、地獄のような日々で、一度は実家に逃げ帰ったお路だったが、長年過ごすうちに、舅姑の本質や、夫の苦悩にも思い至り、何気ない些細なしあわせに心を潤わせることに、自らの喜びを見つけるようになっていく。その心もちが、次第に、戯作者・馬琴の一番の信頼を得るようにもなり、馬琴の晩年は、その功績に大いに貢献することとなる。波乱万丈の人生だが、子どもたちや周りの人間関係には恵まれ、それが支えになっていたのは間違いないだろう。曲亭の家の内幕をのぞき見するような興味深い一冊だった。

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